執筆・講演

みたか教師力養成講座  実践コース
2008年3月8日

「いま、社会が求める教師像」〜 仕事で本当に大切にしたいこと 〜

 「仕事で本当に大切にしたいこと」の本を書くきっかけはこんな理由でした。ここ数年、講演活動を通して全国をまわり、学生、企業の経営者の方など、さまざまな分野の方たちと会いお話をしていると、多くの皆さんが、迷っておられる。悩んでおられることがわかりました。そこで、自分の体験が何かお役に立つかもしれないと思ったことでした。

 この本で最もお伝えしたかったことは、 「自分探し」についてです。多くの若が、将来に対して不安を抱き、若者らしい楽天さがない。世界の平和がおびやかされ、成長への機会も少なくなっていると感じている。

 また、ほとんどの若者が、将来に対して明確なゴールをもっていない。自分がどういう人間になろうかというビジョンもはっきりしていないのです。どうして明確なゴールやビジョンを持てないのか?これは若者だけではない。さまざまな世代の方たちも同様である。そこには、変化の激しい現在は不安定であり、不安感が募っているからだと思います。

 変化は歴史上も常に起こってきたことなのですが、最近はその変化のスピードがあまりにも速く、人々の心、つまり心理がそれに追いつけなくなっている。そのため変化に対応できず、不安を抱え、将来に対する希望をもてないのです。こうした不安を解決する有効な手段の一つは「自分探し」をすることです。

 ソクラテスは「汝自身を知れ」といいました。この言葉は、「自分自身を知れば、自分の意志で、自分の責任で、自由に人生を生きるための選択ができる」「世間に流されず、自分自身にあった生き方がある」と。学生、企業経営者、サラリーマン、教師、すべての出発点は「自分」です。自分がどう生きたいかが明らかになって、はじめて本当の仕事ができると思います。つまり、「自分探し」は人生設計の原点になるのです。

「自分探し」とは

 「自分探し」とは、子供じみたものと思われるかもしれませんが、年齢には関係ありません。人間には「志」があります。当然、「好きなこと」「嫌いなこと」もあります。趣味をもって、生活をエンジョイしたいと思う反面、「生活」のために我慢しなれければならないこともある。このような狭間でどう行動すればいいのか?

 こんなことを自問自答するには、もう年齢的に遅いのか? まだ大丈夫なのか?
と思われるかもしれませんが、「自分探し」は一生続けていくものです。人生のターニングポイントで、「自分は何者か」と迫られる場合もある。何かに失敗してはじめて、それに直面された方たちもいらっしゃるでしょう。教師を目指す皆さんなら、子ども達の前に立って考えさせられた人もいらっしゃるでしょう。

 また、日常生活の中で、何か不満や鬱積があるけれど、自分でそれを説明できない。多分、それは、「自分探し」をしなければいけないかもしれないのに、先送りしている状況かもしれません。大事なことは、「自分探し」を前向きに積極的なものとしてとらえることです。
 確かに、「自分探し」はそんなに簡単なことではありません。今の私でさえ、「人生の師匠」が欲しいとよく思います。

○「自分探し」のヒント

「自分は何者なのか?」
「自分は、どんなことが好きなのか?」
「自分は何を求めているのか?」
「自分の強み、弱みは何か?」
「自分の生きがいは何か?」

 こういうことを常に、自分に問いかける習慣を作ることです。1日、5分でもかまいません。そういう習慣を作ることが大切です。

○好きで好きでたまらないことを探す

 もう一つの自分探しの方法は「好きで好きでたまらないこと」を探すことです。仕事を選ぶときはこれが一番の基本だと思います。これから教師になる皆さんは、もう迷っていませんか?仕事をする場合、それをこなす能力を持っているかどうかよりも、それを本当に好きかどうかで人間のモーチベーションは全然違ってきます。教師は、寝食を忘れても取組める仕事になりそうですか?

 「好きで好きでたまらないこと」がわかるのは簡単ではありません。それが、わかれば、苦労しません。好きだけじゃ食べていけない。そう、おっしゃる方もいるかもしれません。実は、私自身もそうでした。私も、自分がしたいことに出会えたのは、32歳の時です。回り道をしたように感じますが、実はそれが一番の早道でした。
 ですから、皆さんもあせらず、じっくりと「自分探し」をされ、ご自身を見つけていただきたいと思います。そうした人が今、一番求められる教師像となるのではないかと思います。

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