執筆・講演

社団法人日本経済復興協会 記念講演会
2008年10月21日

「21世紀はアジアの時代」

     

日本がアジアのリーダー・盟主となるために

 アジアの盟主、そしてリーダーとなるために今、日本には何が必要なのでしょうか。私は次の長期的展望から4つの点から取り組むべきではないかと考えております。

1.精神革命
現在あるものをすべて見直すことが必要。それには現状を否定してかかる以外ない。そのためには、国民の「精神革命」をする。改革(改め変える)というような甘いものではだめであり、これまでの手法や考え方では通じない。ですから「革命」(急激な変化・根本的に覆す)でなくてはならないのです。

2.創造的破壊を繰り返す
リスクを恐れず、創造的破壊を繰り返すことです。〔創造⇒変化⇒破壊⇒〕のサイクルを創り出す。一過性でなく、持続的に変革を繰り返さなければならない。

3.イノベーション
さらに破壊的イノベーションが必要になります。それには精神革命同様、ぶち壊すことが必要で、その中から新たなものを創造し、これを変化させていくという創造的・持続的イノベーションのマネジメントが必要です。

 

4.社会システムの再構築・官僚政治からの脱却
日本は「国に任せていればうまくやってくれる」という思いがずっとどこかにあって、個人も自治体も努力することを忘れてしまった。日本は特に精神面はもちろんですが、長い歴史からも、国、官僚を中心とした社会構造、システムが出来上がり、それに「かまゆでの蛙」のごとく、官僚政治にどっぷり浸かってしまいました。今こうしたシステムを打破し、一人ひとりの人間が「自立」することが次なる社会をつくるために必要となります。そのために、情報技術を使った知的産業、価値創造、若者の教育が重要になってきます。

 今、世界の金融危機に見舞われ、日本でも殺伐とした不安と自信のなさに覆れようとしております。だからこそ、一人ひとりが「自立」し次なる時代を創りだしていなかければならないのです。

 国が順調に繁栄するためには、思慮深い見解と思考が必要だと思います。栄枯盛衰は世界史が物語っています。マスコミも目先のことばかり論じていますが、落ち着いて10年、20年、50年先から現在を見て、日本のあるべき姿、世界の中での日本の役割、立ち位置を考えることが重要なのではないでしょうか。

 日本は「ものづくり」における素晴らしい経験、技術の蓄積があります。「技術立国」として、これらの蓄積を土台とし、イノベーションを繰り返すことで新たなものを創造していくことが重要です。それには、これら技術を継承し、発展させる人材の育成・教育に注力する「教育立国」となることが必要です。今や経済のみならず、教育面においても、中国、韓国が追い上げています。
金融資本主義のアメリカが傾いてきた今、ものづくりの基礎のある日本は、技術大国としての立ち位置を堅持し発展することで、アジアのリーダーとして尊敬される国となることができる。

 21世紀はアジアの時代と確信しています。確実に軸は西から東へ移りつつあるのです。アジアの責任は大であります。その中で日本はアジアの一員であるということを強く意識した上で、日本がアジアの盟主となるべく、一人ひとりが「自立」した国民として、新たな価値、そして技術を創造することで、新しいアジアの緩やかな協力体制・アジア共同体を構築してまいりましょう。今回の金融破綻を悲観するのではなく、危機後の復興に向けアジアがリードし、世界経済を牽引してまいりましょう。そして日本国はその中心的役割を果たすべく、本日ここにお集まりの皆さんとともに邁進してまいりましょう。

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