執筆・講演

全国社会福祉協議会セミナー
2008年11月27日

福祉事業

 私は3年前より、東京都社会福祉協議会会長の職を仰せつかっておりますので、皆さんがご苦労されていること、悩まれていること、そして福祉事業の問題点、現時点での限界について理解しております。率直な実感として、福祉事業は行政には限界があります。その限界を打破するためには「市民型社会」を創ることしかないと思います。それは、あたり前のことをあたりまえにできる社会でもあります。

― 賀川豊彦の時代となった
 日本には立派な先人が沢山います。私は高校時代古本屋で社会事業家・賀川豊彦の本を見つけ、興味本位に読んだのをきっかけに、彼の活動のバックボーンにあるキリスト教。そして、そこに根ざしたボランティアに大きな関心を持ち、それ以来、尊敬する人物となり、その生き方は私の指針の一つとなっています。

 賀川豊彦は100年も前に、貧困にあえぐ人々のために献身しようとボランティア組織を結成し、本格的な救済活動を始めました。病身の我が身を顧みず、スラム街に飛び込んで、キリスト教の伝道と、福祉、教育などに力を尽くしました。

       

 また、労働・農民運動や協同組合運動、平和運動、さらには執筆活動などの実践者でもあります。長い一生を通じて信仰を貫き、強い精神力で他者への愛に生きる道を実践し、自己の信念と使命感に忠実に生き抜きました。来年はその功績を称え「献身100年記念事業」が東京と神戸で予定されています。今やっとこの賀川豊彦が身をもって率先した「共助」の時代を迎えたのだと思います。

−「共助」 社会全体で支える
 これからは「共助」の時代であることを確信をもって、周囲の皆さんに呼びかけていただきたいのです。これからは社会全体で福祉を支える時代である。福祉の仕事は重労働であることは皆さんお分かです。しかし、なぜかこのような仕事に従事する人は、悲鳴をあげてはいけないような風潮があります。それでは皆さんが倒れてしまいます。ですから、周囲に助けを求めていただきたい。自分達だけで解決しようと思わないでいただきたいのです。

 介護や保育には多くの人手が必要となります。こうした事業には多くのボランティアの方が参加してくださいます。しかし、残念ながらトラブルも多い。何故か。それは受け入れる皆さんがボランティアの皆さんに教育をしてないのです。基本的なルール、こころ構えをしっかり教えることが大切です。

 

 また、こうした多くのボランティアの皆さんに参加していただくためにも市民型社会の早急な構築が必要となります。

 「共助」は皆さんが携わっている社会福祉の分野においては最も求められることではないでしょうか。これまでの官僚型社会では皆さんがご両親の面倒をみようと思っても、看れないのが実情です。真の意味で国民は大切にされていないのです。
 ですから今、市民型社会を創ることが大切なのです。そうすることで本当の意味での先進国の仲間入りができるのです。確かに日本はGDPなど、経済面では世界のトップクラスとなっております。しかし、福祉、教育、文化においては残念ながら、シンガポールやフィンランドに先を越されています。

 福祉の経営を担う皆さんがリーダーシップをもち、福祉サービスを提供する側も受ける側も充実した、誇れる福祉国家、日本を私たちの手でご一緒に創りあげていこうではありませんか。

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