執筆・講演

淑徳大学公開講座「21世紀を担うリーダー養成講座」開講式挨拶
2009年4月11日

人間力の涵養

 リーダーとなるべく、皆さんに心がけて欲しいことがあります。それは人間力の涵養ということです。過去の歴史を紐解いてみると、リーダーの資質として「構想力」とか「行動力」、「決断力」など色々なことが言われる中で、一つだけ変わらないことは、「人間力」この一点だけです。
 我々が魅力的だと思うリーダーは一様にこれを備えていて、尊敬できるというのが第一条件です。

 つまり、リーダーというのは、自分の夢を追い求めている途中で、後ろを振り向いたらフォロワーがついてきている。
これが本来の意味でのリーダーというわけです。人に見えない大きな絵を描いて行動しているうちにフォロワーが現れて一緒に行動してくれていた。こういうリーダーが本当のリーダーということが出来ます。

 ところが、多くのリーダーは権力や地位の力で人を動かそうとしますが、このような人は権力や地位が無くなったら人がついてきてくれるかどうか解りません。これは、本当の意味ではリーダーとは言いません。むしろマネジャーと言ってよいでしょう。一言で言えば、リーダーはパーソナルなパワーをよりどころとし、マネジャーはポジショナルなパワーをよりどころとします。

 これらの違いについて、ウォーレン・ベニス(南カリフォルニア大学教授)は見事に言い表しています。

管理者は管理し、リーダーは革新する。
管理者は短期的な視野を持ち、リーダーは長期的な視野を持つ。
管理者は「どのように」「いつ」を問題にし、リーダーは「何」「何故」を問題にする。
管理者は業績を見つめ、リーダーは地平線を見つめる。
管理者は現状を受け入れ、リーダーは現状を打破しようとする。

             

 但し、多くの組織では両方の機能が必要です。そして、一人の人が両方の役割をこなすということはきわめて難しいことです。だからこそ、優れたリーダーは、自分の限界を心得ていて、番頭のような優れたマネジメント能力を備えた人を脇に抱えているのです。

経営陣のコンビとしては、
例えば、松下電器における松下幸之助と高橋荒太郎、本田技研における本田宗一郎と藤沢武夫

 などの関係です。トップの人は大きな夢を描いてビジョンの力で社員を整列させる。それを番頭がマネジメントしていく。それがうまくいったとき組織は大きく繁栄する。

 皆さんは、色々な人の意見に耳を傾け、議論し、そのなかで自分なりの将来像を描き、そのなかで自分がどのようなリーダーになりたいのか、描いて欲しいと思います。つまり、自分なりの持論を持って欲しい。それが私の願っているところです。

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