執筆・講演

千葉商科大学 ユニバーシティ・アワー
2009年11月25日(水)

「仕事で本当に大切にしたいこと」
― 目指せ社会起業家 ―

アフラックはお陰様でこの11月に35周年を迎えました。一言で35年といってしまえばそれまでですが、特に創業にあたっては血のにじむような苦労、そして孤独との戦いの連続でした。今では皆さんご存知の会社となりましたが、アフラックは、アフラックそのものがベンチャー起業なのです。ベンチャー起業ゆえの試練は多くあります。
本日は、学生の皆さんに起業や事業のヒントになる話をしていただきたいとのご依頼ですので、ベンチャー起業であるアフラックをどのように創業し、またどんな想い込めたか、お話させていただければと思います。

アフラックのスタートダッシュ戦略
「愛」と「正義」「社会の矛盾」に挑戦し、2年半かけ創業はいたしましたが、アフラックは全く無名の会社です。どのように拡大を図ったかと申しますと

(1)人材
事業を始めるには、人材が必要ですが、創業時は10人でスタートしました。創業当時社員の採用は、保険業界からは一切採用しませんでした。それには、業界の常識に縛られたくない、古いパラダイムの延長線上から脱し、新しい発想の会社を作りたい「脱生保」という思いがあったからです。元自衛隊員や元新聞記者、弁護士など保健には素人なそんな社員が保険の新分野の営業をやっておりましたので、野武士集団と表されていました。
しかし、新卒の採用となりますと、全く無名の会社でしたので学生が応募してきても、親御さんから採用しないで欲しいという手紙がくるほどでした。ですから積極的に4大卒の優秀な女性を採用しました。

(2)信用補完
 社会の信用もありません。そこで銀行やマスメディアなど、社会に信用のある大手企業の子会社、関連会社に代理店として登録いただき、グループ内企業の社員に販売していただくことで信用補完しました。
その背景には、第一次石油ショックを受け各企業、新規事業を模索していたということもありました。

(3)変化を先取りする経営
商品においては「時代の変化を先取り」しました。アフラックの創業7年後の81年になるとがんは日本人の死因の1位となり、以来1位となっています。2004年では年間死亡総数102万9千人のうち32万人。およそ3人に1人ががんで亡くなっています。2015年には2人に1人ががんで亡くなると予想されており、現在300万人いるがん患者は540万人程度まで急増すると予想され、がんの2015年問題といわれています。
35年前はがんという病気は死病・不治の病と恐れられており、そんな病名のついた商品など売れるはずがない、そんなリスクの高い事業は成功しないと誰もが見ていました。しかし、アフラックは環境の変化をとらえ、成長できたのです。

Cマーケットは自分で創り出す
 

 アフラック創業時、日本の生保業界は既に100年以上の歴史を経ていましたので、同じ土俵で勝負すれば負けるに決まっています。小さなパイの奪い合いをしたところで、大きな利益は得られません。また、市場が大きければ、競争も激しく、小さな会社に勝ち目はありません。だから、誰も手をつけていない海・ブルー・オーシャンをいけばいいのです。そこで私は、「ブルー・オーシャン戦略」をとったのです。
何故なら、既存市場:「レッド・オーシャン」で限られたパイを奪い合う熾烈な競争をするよりも、未開拓の市場、未踏の分野:「ブルー・オーシャン」で挑戦しよう。新たな需要、マーケットを掘り起こそうと考えたからです。自分で開拓したマーケットであれば、負けるはずはないからです。
アフラックは最初の10年間「がん保険」で地盤を確立し、1985年に、世界で初めて「痴呆介護保険」を販売することで、新たなマーケットを創出しました。そして現在は「生きるための保険」のリーティングカンパニーとしての地位を築いています。

(4)結果
このようなスタートダッシュ戦略をとり、がん保険販売開始から8ヶ月で保有契約口数10万口を達成し、創業2年目の年度末には40万口を越え、以降も時代の要請も反映し、順調に成長、拡大することができました。

(5)創業35周年
創業に向け2年半奔走し、10名でスターしたアフラック。35年を迎えた現在、社員数は3694名 関連会社の社員を含めると約5000名、そしてご家族を含めると本当に多くの方に働いていいただくとともに、関係していただいております。
さらに アソシエイツ数は18682、募集人は10万8000人となっております。
こうした皆様の活動により、お蔭様で本年3月末では、保有契約件数は1、965万件を超え、業界NO.1の実績となりました。目指しております2000万件の達成も間近になってまいりました。
また、2008年度にアフラックがお支払いした保険金・年金・給付金の合計額は4、027億円に達し、1営業日あたり平均16.5億円となります。そのうち、がん保険では保険金・給付金の合計金額は2、930億円となりました。実に、1営業日平均12億円のお支払いをしている計算になります。創業以来、2008年度末までのがん保険の累計お支払い金額は4兆3742億円に達し、お支払い証券数は195万674証券にのぼっております。
このことは、まさに創業時、米国本社の創業者から「アフラックはお支払いするために会社だよ」と教えららことが、実現できている、まさに社会のインフラとしてお役に立てているのではないかと思います。
アフラックはまさに天の時、地の利、人の和「天地人」により創業し成長できたのです。
「I have a dream」と個人が夢を持ち、そして、その「個人の夢」を実現しようとする強い意志をもち、行動を起こすことです。「リード・ザ・セルフ」「リード・ザ・ピープル」「リード・ザ・ソサイアティ」と自分自身、そして人々、最終的には社会をもその活動に巻き込むことで、夢が実現できるのです。アフラックはまさにこの軌跡を辿っているのです。

終わりに
 人生はどんなに回り道をしても無駄にはならないということです。むしろ近道です。是非とも時間をかけて、じっくりと「好きで好きでたまらない仕事」を見つけていただきたいと思います。
そして社会の役に立つという視点をもち、こんな仕事がビジネスになるはずがない。と思われることをビジネスにしていただきたいと思います。
若い皆さんですから命がけで、失敗を恐れずリスクをかけて挑戦していただきたいと思います。そして倫理観とアイデアと工夫をもって社会を変えようと、輝ける新たな時代を築いて社会の役に立とうという強い意思を貫き通し、新しい社会の機軸をつくり、よりより日本、世界にしていただきたいと思います。

私は70歳となり、新たなビジネスをやる人生ではないのでありますが10代、20代、30代、40代の人たちに対して、一緒に新しいビジネスを生み出すお手伝いをしたいと思っております。

皆さんのご活躍に期待いたしております。

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