執筆・講演

「アメリカン・エキスプレス・アカデミー」
〜NPOリーダーのためのリーダーシッププログラム〜
2010年1月22日(金)

「アフラックの社会的使命」
― 信念で生み出した私のビジネスモデル ―

結論
・ リーダーに必要なことは哲学をもち、企業文化を創ること
・ アフラックは「愛」と「正義」「社会の矛盾」に挑戦した(社会起業)
・ アフラックは「お支払いするための会社」である(社会的使命)
・ がん保険普及のために様々な戦略をとった

リーダーとして
 事業とは企業、NPO問わず、いかにビジネスとして成功させるかが鍵となります。何故ならば、いかに高い志や理想を掲げても、ビジネスとして成立しなければその理想は、実現できず、社会は変わりません。そしてリーダーとして何よりも重要なことは、一度事業を興したら継続させることであり、それがリーダーに課せられる責務です。私自身、アフラックの経営を担っていた時代は、7-11といわれるほど、朝早くから深夜まで仕事をこなしておりました。また、夜もアイデアが浮かぶと枕元でメモをとっていました。本当に必死でした。よくいいアイデアがない、どうしたらいいかという相談を持ちかけられますが、明日命を奪われることおもったら必死になって考えます。そのくらいの覚悟で事業を進めれば、必ず道は開けます。

The Aflac Way
 もう一つ大切なことは、リーダーは哲学をもち、その企業の文化を創ることです。アフラック米国本社には、「人々を大切にすれば、ビジネスは後からついてくる」という言葉があります。この言葉は米国本社の経営トップが50年間、代々大切にしている創業時の志です。
 この「人々」とは、アフラックを支持してくださる方々で、すなわちお客様、アソシエイツ、社員、株主、地域社会などすべてを示します。ひたすら他者のため、公益のために働くことです。

 「家族に示すような心遣いや敬意、公平・公正さを持って接すれば、必ずビジネスはあとからついてくる」というこの精神は日本社でも受け継がれ底流に流れています。どんな時代となってもぶれてはならないものが、企業哲学であり文化です。
 皆さんの事業で言えば、サービスを提供する方々はもちろん、寄付をして下さった方々にも満足の行くサービス(例えば、寄付していただいた資金がどのように使われ、役立ち、感謝されたかを明確にすること)を考えることです。
 なぜこうした哲学、文化が必要であるかと申しますと、これらは「物まね」や「コピー」はできるが精神を込めることはできないからです。つまり、真似できないブランドだからです。ですからオリジナルな企業文化をつくり、語りつないでいくことが重要なのです。
 50年たった今、米国、そして日本社でもこの哲学が最高の価値として全社に浸透し実践しているのが世界にひとつしかないアフラックなのです。

あまねく「公」
 今や企業においても、企業市民として視点をもたなければ、利益の追求だけでは誰も相手にしてくれません。昨年、民主党政権が生まれ、民意を反映する、市民型社会がようやく到来しました。その先頭をきっているのが今日ここにお集まりの皆さんであると存じます。
 ですから皆さんはあまねく「公」。私利私欲ではなく「おおやけ」にという精神のもと、そして高い志と使命感を実現させる。つまり社会に役立つ事業を成功させていただきたいと思います。そためには新しい、柔軟な発想のもと、失敗を恐れずリスクをかけて挑戦していただきたいと思います。
 よりより社会、新しい社会の機軸を創るリーダーとして活躍されることを期待いたしております。

 

地盤固め − 全国行脚
 話は変わりますが、日本の生命保険会社の始まりは、慶應義塾大学の創始者である福沢諭吉翁がその著書「西洋旅案内」でヨーロッパの近代的な保険制度を紹介したことがきっかけでした。
 明治14年、福沢諭吉の門下生であった阿部泰蔵によって、我が国最初の近代的生命保険会社である明治生命が設立されました。当時、封建時代の名残の強い時代であったなかで、一般の人が生命保険という保障制度を理解して保険に加入するのは容易なことではなかったといいます。
 阿部氏は、各地の名士に生命保険の必要性を説明し、代理店を委嘱し名士の名声と信用に基づいて生命保険の普及に努めたそうです。明治生命開業の後も、数十回に渡って日本全国を巡回して、各地の有力者に保険加入を勧めて歩いたそうです。結果的に明治生命の営業成績が伸びたのはもちろんのことですが、各地に保険の概念を広める役割も果たしています。言ってみれば日本の生保業界の"父"のような存在の方であります。
 私も阿部氏同様、いえ、それ以上に「がん保険」普及のために創業から今でも、どれだけの人にあって、何十回、何百回と説得するために全国を歩いているかわかりません。阿部さんも高邁な理想をお持ちになって熱い想いで新しい試みに踏み込まれた。日本における生命保険の始まりが明治生命であるなら、日本におけるがん保険の始まりはアフラックであります。そして、両社ともパイオニアとして同じように創業時には熱い想いで苦難の道を乗り越えた歴史があるのです。
 このように全国行脚をすることでがん保険の普及のためのチャネル作り、地盤固めをするために奔走することでリーダーシップをとりました。そしてこの行動が今やアソシエイツ(代理店)との揺ぎない信頼へとつながっているのです。

 アフラックはベンチャー起業として創業しましたが、原点に「社会的使命を果たす」という視点をもっているがゆえに、今日があるのです。そしてビジネスとして成功させるために、リーダーシップをとり、ビジネス戦略を用いたことをご理解いただければと思います。

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