執筆・講演

エムアンドシーインキュベーションセミナー
2010年3月4日

大竹流経営哲学

結論
大竹流哲学とは、
1.卓越した何かをもつ
2.噂に惑わされず、事実のみを信じる
3.失敗から学ぶ
4.人を選ぶ
ことにあります。

 そして経営のリーダーとして、企業を永遠に継続させるためにはオリジナルの企業文化を形成し、語り継いでいくことです。

大竹流経営哲学
 経営には哲学が必要です。経営の神様と言われる松下幸之助氏は、「経営者は経営哲学を持たなければならない。また宗教心を持たないと本当の経営はできない」といっておられました。私もまったく同感です。このことはアシックスの鬼塚氏、土光光雄氏、花王の丸田芳郎氏、京セラの稲盛和夫氏等々、日本を代表する名だたる経営者は皆さん宗教心をお持ちでした。
 そして宗教心を広く、企業経営に発揮され実現された経営者は決して少なくありません。
私も例外でなく、キリスト教の精神が行動の原動力となっています。そのためアソシエイツの皆さんを「愛の伝道師」として位置付けました。

 経営には哲学を日々実施し、さらには先人などの思想を学び、落とし込むことが大切です。私は35歳でアフラックを創業、副社長を11年間努め、その後46歳から社長を9年間努めました。その間私が貫いた経営哲学は次の4つです。

① 卓越した何かを持つ
 日本人は一般的に学校でも社会でも、総合点で評価される時代が長かったものですから、なかなか得意なものを磨くことが出来ませんでした。これからは得意なものを伸ばす時代なのです。アフラックで申しあげるならば「がん保険」「医療保険」と生きるための保険一筋、いわゆる特化戦略としてやってきているのもそういうことであります。経営資源の絞込みがローコストマネージメントに繋がるわけです。また、感動を与える経営でなくてはならない。ですから使命感をもてる仕事をさせていただいたことも強みのひとつであろうかと思っております。

 

② 噂に惑わされず、事実のみを信じる。 真実を見極める目が必要。
 現在は変化の時代でありますが、この変化も「大きく深く早い」ということが特色かと思います。何が我々を惑わす要件かと申しますと情報過多です。以前、ある放送局の会長であった方とゴルフをやったときに、その方が「情報過多というのは情報過疎なのだよ」とおっしゃいました。私はその言葉が焼きついてしまいました。情報過多ということは情報過疎に繋がるのだと、欠かせない心構えです。確実な情報を掴むこと。見えないものの真理を見抜く力を養うことです。
 私の体験から具体的な例を申しあげますと、バブルの時代に大手生命保険会社の社長や銀行の方やお役人が、「とにかく金がだぶついているのだから掻き集めておけ」と私に仰いました。私は「それは一時預かりですから」と一切やっておりません。ですからバブルには全くまみれていません。不動産投資も株式投資もやっておりませんし、変額保険にも手を染めませんでした。また、最近ではサブプライムローンの問題で世界中の金融機関が損失を出していますが、アフラックは一切負債ありません。誠に珍しい会社なのですが、そういったことも我々は体験しました。

③ 失敗例から学ぶ − 失敗を恐れない。
 失敗こそが教訓の宝庫なのです。日本人は、失敗から学ぶことが苦手です。それに比べて、欧米人は失敗を徹底的かつ論理的に分析して、失敗から学習することを忘れません。お陰で、次の計画や戦略で同じ過ちを犯さないばかりか、よりよい結果を出すことができるのです。私は、「この失敗から学ぶ」という発想を、米国のホテルの経営者に教えられました。最高に行き届いたサービスの秘訣を訊ねたところ、失敗事例集を作成し、それを教材として従業員教育を行っていると聞かされたのです。私は、さっそくそれをアフラックでも取り入れ実践しました。

④ 人を選ぶ  ― 企業は人なり
 「企業は人なり」ということですが、経営者には経歴、実績、そして性格、指導力、包容力、洞察力、責任感、倫理観が求められます。更には、ぶれない決断力も欠かすことのできないリーダー(経営者)の条件だと思います。やはり何よりも責任感と倫理観というのが大事なのではないかと思います。

 そして、これから求められるリーダーは、私は、「自分で自分の走る道を開拓できる人間でないとならない」と考えています。そして、私が、人を選ぶ基準は、自分の力で、自主的に、創造性を重視する人か?未来への挑戦ができる人か?リスクへの挑戦ができる人か?の3つです。

 以上のようなことが私は必要なことではないかと、経験上そう思っております。ずいぶん時間がかかりましたが、結局私は「当たり前のことを当たり前にやろう」ということに気づいたわけです。

建設的企業文化を創る
 どの企業にも、その企業の文化、いわゆる企業体質というものがあるはずです。米国のハーバード大学が、この企業文化を「建設的文化」と「防衛的文化」と分けて、企業が建設的文化をもつことで、大いに企業が成長することを証明しました。資料11の建設的文化・防衛的文化を見ても、おわかりのように、米国の207社における企業文化と業績の関係を11年に及び追及したハーバード・ビジネススクールの調査結果により、建設的文化が、業績に多大な好影響を及ぼすことがわかりました。

  防衛的文化 建設的文化
総収益 (166%) (682%)
株価 (74%) (901%)
純利益 (1%) (756%)

という結果になっています。
 最先端を行くと思われている米国企業であっても8割は「防衛的文化」という結果になるそうです。ですから、いかに建設的企業文化を創り出すことが重要かお分かりいただけるのではないかと思います。

企業文化とは、簡単に言えば、社員に共有された信念や価値観であり、社員の考え方や行動のスタイルを方向付けるものです。

 ですから今回のサブプライムの問題が起きてもびくともしません。信実の追求、真理の探求をすることで、流行に惑わされず、主義、主張を貫くことができるのです。どんな時代となってもぶれてはならないものが、企業文化なのです。
 皆さんよくご存知のように、このように企業文化が重んじられ、それがオリジナリティ、ブランドとなって、お客様から愛され、信頼されます。画一的な文化を創る必要はありません。個性あふれるその学校独自の文化を創ることも大きな強みとなるのです。

企業は永遠
 私は2003年から、現在の最高顧問の職にあります。先ほども紹介させていただきましたように35歳でアフラックを創業し副社長を11年間努め、46歳から社長を9年間努めました。社長を退任するとき、まだ早い、なぜ辞めるのか、といわれまた。しかし、起業は永遠であり続けなければならなく、そのためにリミットレスリーダーシップ(限界がない)が必要なのです。そして、その一番重要なことであり、難しいことは、一番いいときに、タイミングよく次の人にバトンタッチすることです。これがいかに難しいことであるか。

 私は、アフラックを設立した時、「企業は永遠に続かなければいけない」という意識をもちました。
 それは、「企業は、誰のものか?」と質問されたら、もちろん、自分のものではありません。「それは、生活者のものだからです。」こういう気持ちから、「企業は永遠であるべき」という哲学を持つようになりました。経営でもそうですが、ついついお客様をないがしろにし、ごまかし「偽・嘘・見栄」が蔓延し偽装列島となってしまっているのです。そして生活者を欺き大きな経済事件が起こり、その結果、その企業はどうなるか皆さんよくご存知のことだと思います。

 さらにこの意識を強くさせたのが、私が、社長に就任する一ヶ月前、アメリカ本社の創業者に訊ねられたことでした。「社長として大切な仕事は何だと思う?」と質問され、私は「利益を出して本社に送金すること」としか答えられませんでした。しかし、答えは何だったと思いますか?お分かりの方いらっしゃいますか?答えは「次のリーダーを選ぶこと」でした。これには本当に驚きました。
 リーダーの仕事は、次のリーダーを選ぶことなのです。このことは、アフラックも何人かの社長を迎えたことで実感しております。人間は、いずれ死を迎えますが、企業は、衰退することは許されません。滅びさせてはいけないという一心で、企業の経営者は、大きな努力をしてきたわけです。
 つまりリーダーには、企業を永遠に存在させる責任がある。そういう責任意識をもたないリーダーは、リーダーとは言えないのです。なぜかと申しますと、リーダーは「リスクの請負人」だからです。

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