執筆・講演

2011年ふるさとテレビ第2回月例セミナー  2011年2月18日

「アフラックの社会的使命と役割」― 人材育成が成功のかぎ ―

1.アフラック創業 −「愛」と「正義」「社会の矛盾」に挑戦

 アフラック創業の想いにつきましては一言で申しますと、アフラックは社会起業であり、創業は、私利私欲ではなく、「愛」と「正義」「社会の矛盾」に挑戦したということをご理解いただきたいと思います。この仕事は必ずやお客様のためになる。将来絶対に評価され、感謝されることを信じて創業したという視点があることをご理解いただきたいのです。
 そして創業からアフラックの根底に流れているのは、「がんの悲劇からお客様を救いたい」「民間厚生省」となって社会的使命を果たしたいという想いです。

事業免許の取得に2年半

 さて、アフラック創業を決心しましたが、その後が本当に大変でした。大蔵省(現・金融庁)から「がん保険」の許可が下りるまで2年半を要しました。その2年間は毎日のように大蔵省へ出向き、お願いしました。その姿をみて「大竹さんは省の人間よりも出勤率がいい」とからかい半分にいう人もいた程です。
 お役所通いも大変だったのですが、いつまでたっても日本での認可が下りず、米国本社は日本進出を諦めました。そのため、米国から送金もストップしてしまい、社員の給料を払うために、それまで経営していた会社の権利を譲って得たお金と、銀行(旧第一勧業銀行)から丸裸になるくらい大借金をして乗り越えました。こうした苦労の末、ようやく大蔵省(現・金融庁)と厚生省(現・厚生労働省)から「がん保険」の販売の認可をとり、アフラックを創業することができたのです。この許可は戦後2番目の外資系保険会社への認可となったのです。

何故、2年半もの月日を要したか?

<がんに対する認識>
がん=死 不治の病 として恐れられていました。
がんにかかったら、お嫁にいけないとまでいわれていた時代であった。

<保険のあり方・法律や規則の変更>
 米国と日本では医療制度の違いがあり、日本での販売には保険商品も、日本の保険業法等にマッチさせる必要がありました。

 米国では、治療や入院に対しいくらといった医療、損害保険が主流でしたが、日本では生命保険といえば、死亡保険、生存保険、生死混合保険という基本的な3種類でした。
 米国から直輸入された単独の疾病保険である「がん保険」は、そのどの分野にも当てはまらない保険の種類で第三分野として分類されました。保険内容からいうと損害保険の分野に近く、商法の規定で死亡保障の付加が必要とされていたため、「がん保険」に死亡保険金をつけることで、大蔵省と折衝し商品開発を進めました。

<何故 日本でがん保険が重要になると考えたか>
 大阪万博に来日したジョンB.エイモス氏が、日本人には風邪を予防するためにマスクをしている人が多いこと。さらに日本人の健康や衛生に対する意識の高さに着目したことにあります。
 当時日本では、がんによる死亡が2番目に多く、増加傾向にあることからも日本のマーケットは重要と考えました。

<公益性>
 厚生省に対しては、公的保険制度を補完する商品であると、がん保険の役割と必要性を訴えました。
 大蔵省に対しては、保障するがんの範囲や診断方法、がんに対する社会認識も保険の取り扱いに反映させることが極めて重要なテーマとなり、日本人のがんに対する正しい理解と治療対策の推進のためにも、がん保険の導入が望ましいことを訴えました。

<何が決め手で承認されたか?>
 保険事故の原因をがんのみに限定した点が、従来のわが国の生命保険に類を見ない特色であったこと(大蔵省の免許付与時のコメント)

2.人間力を磨く − 韓国の事例に学ぶ

 「人間力」を磨くには、人を育てることが大切になります。そうした人材育成の重要性、人材育成により地方自治を成功に導いた、韓国。そして国内でもそれにひけをとることなく、地方自治を活性化している事例をご紹介し、地域経済をになう皆様のご参考としていいただきたく、昨年末『奇跡を呼びこむ、人』を刊行いたしました。

 本書は人口5万人の韓国の小さな村の地方自治の成功事例であり、韓国で公務員の必読書としてベストセラーとなった『株式会社 長城郡』。
 長城郡では郡守自らCEOとなり、株式会社長城郡になぞらえ行政を行うとともに、毎週金曜日「長城アカデミー」を15年間開催し続けました。そこには郡守自ら毎週参加し、役人、住民の意識改革をし、地方に活力を取り戻し、新たな国づくりを目指したのです。
 そのCEOの信条は「地域を変えられるのは人である。人を変えられるのは教育である」です。この信条のベースには松下幸之助の「人づくり」の思想が根付いているのです。

まとめ

最後に地方活性化の方策として、プラチナ構想ネットワークをご紹介させていただきたいと思います。このネットワークは、昨年8月に発起人47名で設立総会を催し、設立したばかりのもので、私も発起人の一人として参画させていただいております。
 前東京大学総長の小宮山宏氏(現三菱総合研究所理事長)が代表を務め、各界の識者で構成されております。
 本構想は、エコ社会を意味する「グリーン」や健康を意味する「シルバー」などさまざまな輝きを持つワンランク上の暮らしを「プラチナ社会」と定義して、そうした社会を築くのが狙いです。同じ課題をもつ地域同士が連携し、ネットワークを組んで互いの知とアイデアを交換していけば、よりすばらしい解決策が見つかる。地域での暮らしを良くするための個々の努力が、何十にも重なりあって大きな需要になり、法や社会制度を変える力となる。結果として経済の成長につながることを目指しているものです。
 こうしたつながりを有機的に活用し、皆さんのふるさとの活性化へとつなげていただきたいと思います。皆様のご活躍ご期待申しあげます。

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