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コラム — 看護について

准看護婦問題(「産経新聞」2002年5月29日)

 今日から日本看護協会の総会が開かれるが、毎年恒例となった(?)准看護師問題が今年も取り上げられる。出口の見えないこの議論には今やむなしささえ漂う。協会が准看制度廃止を訴え続けて半世紀近くになるにもかかわらず、日本医師会の反対で未だ実現に向けて動き出す気配すらない。

 制度廃止が無理なら養成停止を、と現実的な議論に方向を変え、厚生労働省の検討会で看護養成統合の目途をつけるところまで行ったのが、6年前のことであった。その時点で准看養成停止は決まったはずだった。ところが合意後の日本医師会の態度変更で、すべては白紙に戻された。看護界には理不尽な敗北に無力感が広がった。

 

 高度な医療・看護への国民のニーズが高まる中、2年間の准看養成教育では十分に対応できないというのが、養成を最低3年過程に統合し、看護師養成に一本化しようとした理由であった。准看問題が単なる医師会と看護協会の争いごとであるなら、私は関与する気はない。しかし、より教育レベルの高い看護職を作ろうというのが看護養成統合の狙いであって、患者の立場から私たちが看護養成統合の早期実現を求めるのは当然であると考える。

 今の准看護師は41万8千人で、看護職109万8千人の38・1%にあたる(平成12年厚生労働省調査)。平成元年には47%だったことからすれば、人数は確実に減ってきている。また、自ら閉校する養成所も多く、去年に比べこの1年で130校減って322校(うち高校衛生看護科24校)になった。平成2年に632校あったことからすると半減である。日本医師会が意地になって守り通そうとしても時代は確実に変化していることはデータの上からも明らかである。

 日本医師会は地域医療の担い手としての准看護師の必要性を強調している。しかし実際に取材してみると、医師会のメンバーでも地域医療に本気で取り組んでいる開業医の下には優秀な看護師は集まっている。旧態依然たるお医者様然とした、競争力のない開業医が、准看護師でなければ人材を確保できないという固定観念から、この制度にこだわり続けているのである。埼玉などは県独自で准看養成停止を決めており、准看養成停止が地域医療の崩壊につながるということは幻想だと言わざるをえない。

 この問題に対して、私は納税者として発言したい。今もって准看養成所の運営補助金として国と地方合わせて36億円もの税金が使われていることに明確にノーと言いたい。准看養成停止のための法改正は暗礁に乗り上げているが、少なくとも国の検討会で「看護養成統合への努力」は結論付けられているのである。無駄な支出を抑えようと国全体で取り組んでいる時に、廃校しようという学校に毎年1100万円もの助成を続けるのは無駄であると言わざるをえない。

 養成所の運営が財政的に困難になれば、准看養成は停止せざるをえなくなるだろう。准看養成停止が患者のための看護改革であることを考えれば、納税者からアクションを起こし、実質的な改革を推し進めることは意義のあることだと思うのである。納税者の視点に立った改革を進められるかどうか、政治家の姿勢も試されていると言えよう。

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