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これまでの著書・コラム

コラム — NURSE SENKA

「NURSE SENKA」2005年 9月号
筋肉が骨化するFOPの難病指定を求める37万人の署名を厚労省に提出

病気のことを多くの人に知ってほしいと患者自ら取材に応じた
 筋肉や細胞が骨化するという難病FOPについて、再び取り上げました。前々回の放送の時には、初めて患者さんがテレビ取材に応えてくれて、私たちはこの病気の驚くような深刻な実態を初めて知ることができました。ここでひとつ風穴があいたということなんでしょうか、今回も2人の患者さんがカメラ取材に応じてくれました。
 輪島の北岡幸美さん(20)は瞳の大きなかわいい女性です。小学3年生の時に、病気が分かったそうです。今は足首と腰の骨化が進み、足が開いたままつっぱったような感じで歩いています。
「友達とお酒を飲んだりして遊ぶのが大好き」という普通の女の子です。でもそういう言葉を聞くと、救われる思いがします。少しでも飲み代の足しになればと、車の電子部品の一部を作る内職をしています。1つ作るのに20分かかりますが、それで20円だそうです。でも、人に頼るのではなく、自立したいと願う姿勢はなかなか見上げたものです。
「治療はなんにもありませんよ。レントゲン撮って、変わりありませんかって聞かれて、ありませんって答えて。その繰り返しだけです」
 幸美さんはこの病気のことを多くの人たちに正しく知ってもらいたいとの思いから、テレビの取材に応じるなど積極的なアピールを始めました。私はその幸美さんの勇気に心から拍手を送りたいと思いますが、父親は複雑な胸のうちを正直に語ってくれました。
「自分が障害を持っていることを世間に現すことに、私としては心配が大きかったんですけどね」
 しかし、幸美さん自身はカラッとしていました。気持ちの上で吹っ切れてしまったからでしょうか、臆することなく、どんどん前に出ていくようになりました。
 今はパソコンで通信教育を受けている鶴田啓人さん(17)は、身体が横に大きく湾曲しています。母親の夏江さんによると、生まれた時から「身体が硬いな」という印象があり、生後4カ月でFOPの疑いがあると医師に言われたそうです。でも、小学生までは普通に走ったりしていましたが、中学生の体育祭の時に怪我をしてから、急速に背中の骨化が進んだということです。
 啓人さんのレントゲン写真には、その時にできた背中の上と下をバイパスのようにつなぐ新たな骨がはっきりと写っています。このために成長に伴って背骨が曲がっていってしまったのだといいます。
 今は顎の骨化も進み、関節がくっついたような状況になっていて、口が開きづらく、喋りにくく、また呼吸も苦しくなっています。彼の場合もやはり有効な治療は行われていません。
「治療法がないというのは、寂しいって感じはありますね」
 啓人さんはボソッとつぶやきました。幼い頃、足の親指が曲がっているということで手術をしたということですが、そもそもこの病気に手術は禁忌です。メスを入れたり、注射をしただけでその部分が骨化する可能性があるからです。その時の医師はこの病気に対するキチンとした知識を持っていなかったのかもしれません。
 8歳から彼を診てきた佼成病院整形外科の真鍋典世医師は言います。
「17世紀からいろいろな治療法が試みられてきましたが、今も治療と言えるような治療ができないのが現状です。でも、アメリカでは、約400人の患者さんがインターナショナル・アソシエーションという団体を作って啓蒙活動を積極的に行ったことから、今年の1月になって治療のガイドラインが公開されました。日本でもこういった治療方針の基盤作りが必要だと思います」

ネットを通じた交流から患者家族の会を結成する動きに
 日本ではこれまでほとんどの患者・家族は孤独な闘いを続けてきました。それがインターネットを通じた出会いがきっかけとなり、ヨコの連携が始まりました。そして、国に難病指定を求める署名活動を行うまでになりました。この署名は目標10万人という当初の目標をはるかに上回り、約37万人分も集まりました。
「『私も障害を持っていますが、この署名活動を通じて、運動に参加することができてありがとうございます』なんていう声が寄せられましてね。私たちもそ ういう声に背中を押されるような感じで、がんばれたんだと思います」  そう語る夏江さんは幸美さんらとともに5月、厚生労働省を訪れ、この署名を提出し、担当官に直接訴えかけました。これまでネットを通じた交流だけだっただけに、初めてお互いが顔を合わせたことで大いに勇気づけられたといいます。そして、今度は患者家族の会を作ろうという話が盛り上がりました。
 患者家族の連携が充実しているのがALSです。そこで何か参考になることはないかと、ALS協会静岡支部の堀内由紀子さんに話を聞きました。20年前まではALSも全く知られていない病気だったといいます。しかし、患者家族同士が交流を始めたことによって、難病指定もされるようになり、さまざまな支援の手も差し伸べられるようになったといいます。今では立派な協会の機関紙も発行するようになり、継続的に啓蒙活動にあたっています。  実は堀内さん自身はALS患者ではなく、家族に患者がいるわけでもありません。ある医師に在宅で人工呼吸器をつけた患者の家に連れて行かれ、激しい衝撃を受けたことがきっかけとなったそうです。自分でも何かしなければならないんじゃないかと考え、自らボランティア活動を始めたのだといいます。まさにボランティア精神の権化のような人です。堀内さんは言います。
「私のように患者・家族でない一般の人も参加するようにすると会の活動に広がりが出てきますよ」
 ALS患者家族会と言わずに、ALS協会という名前を使っているのは、そういう背景があったからでした。夏江さんも堀内さんの話に真剣な表情で耳を傾けていました。
 FOPはようやく動き始めたばかりです。誰しも経験のないことを始めているわけで、足並みをそろえるのはなかなか大変なようです。しかし、私もホームページを通じて、署名活動の立ち上げからかかわったこともあり、いい形での力の結集が行われることを心から期待しています。とりあえずは難病指定を勝ち取るまでをしっかりとフォローして支援していきたいと考えています。

(編集部注)患者会ホームページ
>>J-FOP〜光〜

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