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コラム — NURSE SENKA

「NURSE SENKA」2005年10月号
西洋医学一辺倒の日本の医療を患者中心に改革する「統合医療」

西洋医学と相補・代替医療を共存、統合する医療
「統合医療」という言葉をご存じでしょうか? これこそが日本の医療を患者中心のものに変える最も重要な改革だと私は確信しています。そこで今回の番組ではこのテーマを取り上げました。
 日本の医療というのは西洋医学の体系によって形作られています。それを私たちは当たり前のことと受け入れてきました。しかし、患者の実感として、どうでしょうか? すべて病院の中だけで、私たちの病気は治るでしょうか? 西洋医学は万能でしょうか?
 西洋医学以外に、漢方などの東洋医学もあれば、カイロプラクティックや指圧、気功、ハーブ治療、サプリメントなどさまざま療法があります。こういうものに頼って救われている人もたくさんいます。これらは相補・代替医療といいます。
 西洋医学と相補・代替医療をまさに統合するカタチの医療が「統合医療」です。今は西洋医学の権威によって築かれた世界ですから、それ以外の代替医療はいかがわしいものとみられています。そうした壁を取り払おうとするもので、西洋医学を否定するものではありません。患者にとって何がいい治療なのかという観点から、共存していこうとするものです。
 私自身、長年腰痛に苦しめられてきました。紹介状を持って大学病院に行ったところ、レントゲンやら採血やらであちらこちらを検査のために回らされた挙げ句、湿布を貼られ、後は自宅で2週間安静にしていなさいと言われました。そんなことはできないと言うと、それじゃ手術をしましょうかと言われました。手術をすると回復までに半年もかかるというのです。
 冗談じゃないということで、病院から帰る途中、友人に教えてもらった「骨接ぎ」という看板の柔道場に駆け込みました。そこで、柔道整復師の治療によって、治すことができました。
 その時は劇的効果があったのですが、何度も再発を繰り返しているうちに効かなくなってきました。それからさまざまな治療を探してさまよい歩きました。ようやくあるカイロプラクティックにかかって初めて、完全に救われました。今は予防のためにも定期的にかかっていますが、10年以上、腰痛はありません。
 代替医療こそが私の腰痛を救ってくれたのです。こういった体験のある方はたくさんおられると思います。しかし、病院にはカイロプラクティックがありません。気功もありません。サプリメントもありません。漢方薬だけは一部、使用する病院が出てきましたが、限定的です。
 末期がんにメシマコブが効いた、アガリクスが効いたというような話はたくさんあふれています。病院ではそういった民間療法は完全に無視されています。そのために、患者はあらゆる情報に振り回されているのです。藁にもすがる思いで、高い費用負担を強いられているのが現状です。
 統合医療的な治療を自らのクリニックで実践されている丹羽正幸医師は言います。
「私は30年間、健康食品をチェックしてきましたが、メシマコブでも効くものと効かないものははっきりとわかっているんです」
 しかし、丹羽医師は自分ではわかっていても、どのメシマコブががんに効くなどと公に言うことは許されません。そもそも薬として認可されていないものには「効く」という表現そのものが薬事法で禁じられているのです。
 病院の中で使用される薬は厚生労働省の認可が必要であり、厳しすぎるとも思える規制のなかにあります。ところが、健康食品、サプリメントなどについては、野放しといえる状況なのです。まさに玉石混交といった状況です。そういった法律の隙間に乗じて、メシマコブといえば売れるということから、悪徳業者も参入しているようです。

患者に合わせた医療実現のためには混合診療制度が必要
 日本統合医療学会会長の渥美和彦東大名誉教授は言います。
「相補・代替医療にはまだ科学的評価が与えられていないんですね。ですから、その評価をするシステムと基準作りが早急に必要なんです」
 渥美先生は、もともと人工心臓の権威で、西洋医学の頂点を究めた人です。しかし、西洋医学には限界があると感じたことから、統合医療に目を向け始めたのです。私たち患者サイドから聞いていると、実にまともなことをおっしゃっています。ただ、西洋医学の専門家の間では、渥美先生は突然、漢方やなんとか療法だなんて言い始めたことから、おかしくなっちゃったんじゃないかとみられているのです。
「西洋医学は統計学的な医療であって、みんなに通用する平準化された治療を開発してきました。これに対して、統合医療は個人個人の違いを認識して、一人ひとりに合わせた医療を実現しようとするもので、そもそも哲学が違うのです」
 渥美先生の言うとおり、統合医療は今の西洋医学一辺倒になった医療の哲学そのものを変える大変革なのです。
「統合医療」が実現したらどうなるか。患者はまずは医師の診察を受けた後、たとえばカイロプラクティックや指圧の治療を受け、ハーブやサプリメントを処方されたりします。ワンストップで、あらゆる療法で治療を受けることができるようになるのです。
 これを実現するためには、保険内診療と保険外診療を併用できる混合診療を認めることが必要になります。今は厚生労働省で認可されていないサプリメントなどを病院で使えば、保険診療にはならず、すべてが自費の自由診療になってしまいます。
 混合診療を認めることには未だに日本医師会は激しく抵抗します。金持ち優遇の医療になるというのですが、統合医療を実現することがどうして金持ち優遇になるんでしょうか? むしろ、患者が治療のために使っている費用の無駄も抑えられるようになると思うのです。
 これまでの混合診療の議論のなかには、統合医療からのアプローチはありませんでした。議論の流れを変えるきっかけになるに違いありません。
 患者の実感として、この「統合医療」は実に受け入れやすい考え方です。それが実現できないとすれば、それは患者にとって不幸なことだと思います。さらに継続して実現に向けて追求していきたいと考えています。

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